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蟲と僕

ある日僕の部屋に蟲が出た
酷く奇怪で劣悪な姿形に吐き気がした
僕はそいつを必死に潰した
潰れた姿もそれまた残虐で吐き気がした

その日から毎日僕の部屋に蟲が出た
僕は毎日そいつを必死に潰した
嫌なものが潰れていく感覚に
喉に込み上げる妙な快感があった

季節は変わって蟲はいなくなった
寂しさを覚えたのは過去故の美化か
酷く毛嫌いしたそいつさえ
僕の生活の一部になっていたのだ

蟲が僕を攻撃した事はなかった
僕が一方的にあいつの姿形を咎めただけ
初めて僕は僕を客観視した
共存というのは罪が無くとも
美意識の違いだけで排除の対象と
なるらしい

あいつの間違いでも僕が間違いでも無く
ただあいつは赴くまま部屋に現れ
僕は赴くまま殺しただけ

ある日僕の身体から蟲が湧いた
酷く奇怪で劣悪な
それでいてどこか愛らしく
劣悪というのは僕の言い様で
あいつにとって僕は劣悪で
あいつは僕の行動から湧き出た蟲で
それでも敵と見做す感情も事実で
僕が生きている以上
あいつだって生きてるんだ
一方的な殺戮に於ける妙な快感だけは
今じゃ罪悪感
これからは平等に殺し合い
平等に語り合おう

 

制作年 2016/0426
2016-07-30 | Posted in 未分類Comments Closed